同志少女よ、敵を撃て

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すっかり更新が空いてしまいましたが、仕事関連で色々ありましてちょっと更新できる状態ではありませんでした。現在はだいぶ落ち着いてきたので、また更新していければと思います。

さて、ここ1ヶ月ほど更新が止まっていたわけですが、その間にロシア-ウクライナ戦争が勃発しましたね。戦争が起こる、しかも21世紀の、この令和の世において侵略戦争が起きるとは思ってもいませんでした。

以前、ファクトフルネスというベストセラーになった本がありましたが、この本によれば、暴力によって死ぬ確率というのは年々益々下がってきており、戦争においても領土や資源的なメリットが薄くなりつつあり、戦争を起こすコストの方がはるかに高くつくため、戦争は起きづらくなっていくであろう、というようなことを書いていたように記憶しています。

今回のロシア-ウクライナ戦争においても、領土的、資源的なメリットよりも、経済制裁や国際的なロシアに対する信頼感の失墜といった面を考えれば、リスク・デメリットの方がはるかに大きく、今後何年になるかわかりませんが、戦争終結後のロシアには長い冬が待っていることは確実なように思います。

しかしそれでもプーチン氏は戦争を選択しました。それは西側諸国の脅威を食い止めるため。強いロシアを作り上げる。という、非常に保守的な理由からの選択のように、素人目からは見えました。

このあたりの話は色々なメディアで取り上げられていますが、僕は深く歴史を知る、という点でコテンラジオで直近公開された、ウクライナとロシアの歴史編を聞くことをおすすめします。

同志少女よ、敵を撃て

ロシアの歴史を知るにあたり、先日テレ東のYoutubeチャンネルで動画を見ていたのですが、非常に歴史的な側面から、ロシア側の目線で今回の戦争を考える動画が上がっており、興味深く見ていました。

で、そこで紹介されていた小説を、息抜きがてら買って読んでみることにしました。それがこちら「同志少女よ、敵を撃て」です。

内容としては、ドイツとソ連の戦い、独ソ戦をテーマとした小説です。第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作ということで、世間的にも評価されており、かなり面白かったです。

おおまかなあらすじとしては、暮らしていた村がドイツ兵に襲撃され、一人生き残ったロシア人の少女が、復讐のために軍隊に入り、狙撃兵として生き抜いていく・・・という話です。有名なスターリングラードの戦いに参戦したり、ロシア人の有名な女性スナイパー、リュドミラ・パヴリチェンコが小説内で出てきたりします。

テレ東の動画でも紹介されていましたが、この小説はかなり歴史考察がしっかりされていて、小難しい独ソ戦の本を読むのは辛い方におすすめ、ということでした。

ヘビーなラノベ、といった印象

僕は独ソ戦についての詳しい知識はないし、WW2については一般的な知識程度しか持ち合わせていないのですが、物語は中弛みすることなく、最後まで引き込まれて読み終えることができました。

この作品、女性スナイパーが主人公、ということもあり、なんというか最初の方はヘビーなガールズパンツァー、みたいな印象を受けました。最初、女性スナイパーの養成学校のようなところに入るのですが、ラノベチックな設定の女性たちが何人か出てきて、そこで卒業まで耐え切り、仲間と共に戦場へと向かう流れとなります。

そこからはかなりヘビーな描写が続きます。周りの人間はポンポン死ぬし、戦場のリアルさはかなり意識して書かれているように思います。

また、この本の内容的に、戦争の中での女性、という点もテーマの一つだと感じました。女性に対する暴力的なシーンも出てきますし、そういったものと対比する形で、男性兵士がどう考えているのか、男性社会としての軍隊、みたいな話も出てきます。また、ロシアの女性は兵士として戦う一方で、アメリカの女性は男性を鼓舞するチアガール、という描写も出てきます。社会のあり方、思想によって女性の位置付けが規定されていることがわかります。

なお、女性に対する暴力について、主人公の幼馴染と話す中でこんな会話が出てきます。

「君の言う通りなんだ。女性を乱暴することが許されるはずがないとも。(中略)尊敬していた指揮官が、部下を後ろに並ばせて十数人で女を分けたとか、そんなふうに笑う、そういう様子を見てきたんだ。ショックを受けたけれど、それって、指揮官が悪魔だったからじゃない・・・この戦争には、人間を悪魔にしてしまうような性質があるんだ。僕はそれを言いたかった」

戦争が人を変えてしまう、というのはよく聞く話で、例えばナチスでユダヤ人の大量虐殺を指揮していたアドルフ・アイヒマンが、戦争終了後、亡命していたところを捕らえられた際、あまりにも普通の人で、こんな人が大量虐殺の指揮をしていたなんて信じられない、といったエピソードを見たことがあります。

さておき、こうした非日常である戦争がいかに人を変えてしまうのか、そしてその最中、戦争終了後にどう生きていくのかを、主に女性視点で書いてある点を興味深く読んでいました。

まとめ

戦争ものではあるし、それなりに残虐なシーンはあるものの、割と読みやすい内容だったと思います。アニメ映画とかにしても良い感じのライトな設定もあるので、普段本を読まない人でもとっつきやすいのではないでしょうか。

また、改めて今の状況踏まえ、戦争について考える良い機会だとも思いますので、最初の一冊としてどうぞ。

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